ダイエットと聞くと、まず多くの人が思い浮かべるのがカロリー制限です。
カロリー制限とは、簡単に言えば「摂取カロリーよりも消費カロリーを大きくして、脂肪を減らしていく方法」です。
理屈だけで見れば、摂取カロリーから消費カロリーを引いた時にマイナスになっていれば、体脂肪は減っていくはずです。
しかし実際には、「食べる量を減らしているのに痩せない」「運動もしているのに体重が落ちない」と悩む人は少なくありません。
その理由は、カロリー制限そのものが間違っているからではなく、消費カロリーの設定を間違えていることが多いからです。
カロリー制限が失敗する大きな理由
カロリー制限で失敗する人の多くは、摂取カロリーよりも消費カロリーの見積もりでミスをしています。
摂取カロリーは、食品表示やアプリを使えばある程度把握できます。コンビニの商品であれば、ほとんどの場合、裏面にカロリーが記載されています。
一方で、消費カロリーはかなり推定が難しいです。
特に失敗しやすいポイントは、次の3つです。
- 基礎代謝を高く見積もっている
- 運動による消費カロリーを多く見積もっている
- 体重の変化に合わせてカロリー設定を更新していない
この3つが重なると、自分ではカロリーをマイナスにしているつもりでも、実際にはほとんどマイナスになっていない可能性があります。
「食べていないつもり」「運動しているつもり」はズレやすい
「食べていないのに痩せない」と感じる人は多いですが、実際には摂取カロリーを少なく見積もっているケースがあります。
ある研究では、被験者が自分の摂取カロリーと運動量を自己申告したところ、摂取カロリーを平均47%少なく見積もり、消費カロリーを平均51%多く見積もっていたという結果があります。
つまり人は、自分が思っている以上に食べていて、自分が思っているほど運動では消費できていない可能性があるということです。
これは意思が弱いという話ではありません。人間の感覚だけでカロリー収支を正確に把握するのは、かなり難しいということです。
そのため、カロリー制限を成功させるには、なんとなく食事を減らすのではなく、まず数字で管理することが重要です。
カロリー制限は「大きく減らせばいい」わけではない
カロリー制限では、摂取カロリーを減らせば減らすほど良いと思われがちです。
しかし、これは危険です。
マイナスカロリーが少なすぎると体重は減りません。一方で、マイナスカロリーが大きすぎると、脂肪だけでなく筋肉も落ちやすくなります。
筋肉量が落ちると、見た目の引き締まりが出にくくなるだけでなく、基礎代謝も下がりやすくなります。
目安は週あたり体重の0.7%程度
減量ペースの目安としては、週あたり体重の0.7%前後を狙うのがおすすめです。
アスリートを対象にした研究では、週あたり体重の0.7%を落とすグループと、より速いペースで体重を落とすグループを比較しています。
その結果、ゆっくり減量したグループの方が脂肪量の減少が大きく、筋肉量も維持・増加しやすい傾向が見られました。
つまり、体重を早く落とすことだけを優先すると、筋肉を削ってしまう可能性があります。
ダイエットで大事なのは、体重を落とすことではなく、できるだけ筋肉を残しながら脂肪を落とすことです。
消費カロリーはどう計算するのか?
消費カロリーは、基本的に次のように考えます。
基礎代謝 × 生活強度指数 = 1日の消費カロリー
基礎代謝とは、何もしていなくても生命維持のために使われるエネルギーです。
性別、年齢、身長、体重、筋肉量などによって変わります。
そこに、普段どれくらい動いているかを表す生活強度指数をかけることで、1日の総消費カロリーを推定します。
ただし、この「基礎代謝」と「生活強度指数」の両方でミスが起こりやすいです。
よくあるミス1:基礎代謝を高く見積もっている
ネット上の基礎代謝計算ツールでは、ハリス・ベネディクト方程式が使われていることがあります。
ハリス・ベネディクト方程式は有名な計算式ですが、もともとは欧米人を対象にしたデータをもとに作られています。
そのため、日本人に使うと基礎代謝が高めに出る可能性があります。
日本人を対象にした研究では、ハリス・ベネディクト方程式は実測値よりも高く出やすい傾向があり、Ganpule方程式の方が日本人の基礎代謝を比較的近く推定しやすいとされています。
基礎代謝を高く見積もると、その後に計算される消費カロリーも高く出ます。
その結果、「1日1800kcalなら痩せるはず」と思っていても、実際には維持カロリーに近くなっている可能性があります。
よくあるミス2:生活強度指数を高く選びすぎている
消費カロリーを計算する時には、基礎代謝に生活強度指数をかけます。
一般的には、次のような数値が使われます。
- 1.3:生活強度が低い。買い物など1時間程度の歩行はあるが、主に座って過ごす
- 1.5:やや低い。通勤や家事などで2時間程度の立ち作業はあるが、大部分は座って過ごす
- 1.7:やや高い。1日1時間程度のサイクリングや速歩を行う、または立ち仕事が多い
- 1.9:高い。激しいトレーニングや重労働を日常的に行っている
ここで注意したいのは、多くの人が自分の運動量を高く見積もりやすいということです。
「週に何回か筋トレしている」「仕事でよく動く」「有酸素運動もしている」と思うと、つい高めの生活強度指数を選びたくなります。
しかし、実際には生活強度指数を高く設定しすぎると、消費カロリーが過大評価されます。
ダイエット目的でカロリー計算をするなら、自分が思っているよりも少し低めの生活強度指数から始める方が安全です。
よくあるミス3:運動した分だけ消費カロリーが増えると思っている
運動をすれば、その分だけ消費カロリーが増えると思われがちです。
もちろん、運動中はカロリーを消費します。
しかし、運動量を増やした分だけ、1日の総消費カロリーが単純に増えるとは限りません。
理由は、体には代償反応があるからです。
NEATが下がると、総消費カロリーは思ったほど増えない
NEATとは、運動以外の日常活動による消費カロリーのことです。
例えば、歩く、立つ、階段を使う、家事をする、姿勢を保つ、無意識に体を動かすといった活動です。
運動を増やすと、その疲労によって日常生活での活動量が落ちることがあります。
例えば、ジムで長時間有酸素運動をした結果、家では座る時間が増える、移動が面倒になる、休日に寝て過ごす時間が増えるといった状態です。
この場合、運動中に消費したカロリーの一部が、日常活動量の低下によって相殺されてしまいます。
つまり、「運動で600kcal使ったから、1日の消費カロリーがそのまま600kcal増えた」とは言い切れないということです。
運動量を増やしすぎると食欲も増えやすい
運動による代償反応は、NEATの低下だけではありません。
運動量が増えることで、食欲が増えることもあります。
せっかく運動でカロリーを消費しても、その後の食事量が自然と増えてしまえば、カロリー収支は思ったほどマイナスになりません。
「運動しているのに痩せない」という人は、運動量だけでなく、運動後の食欲や日常活動量の変化も確認する必要があります。
活動量と消費カロリーは直線的に増え続けない
多くの人は、運動量を増やせば増やすほど、消費カロリーも比例して増えると考えます。
しかし実際には、活動量が増えるほど、体は他の部分の消費を抑えようとする可能性があります。
身体活動量と総消費カロリーの関係を調べた研究では、活動量が低い段階では消費カロリーも増えやすい一方で、活動量が高くなるにつれて消費カロリーの増加は頭打ちになりやすいことが示されています。
これは、体がエネルギーを一定範囲に収めようとするためです。
そのため、たくさん運動している人ほど、逆に生活強度指数を高く設定しすぎている可能性があります。
仕事でよく動いている人、有酸素運動を多くしている人、トレーニング量が多い人ほど、「本当にその運動量が1日の総消費カロリーに反映されているのか」を慎重に見る必要があります。
カロリー制限中は代謝が落ちる
カロリー制限を始めたばかりの頃は、体重が順調に落ちることがあります。
しかし、しばらく続けていると体重の減りが止まることがあります。
これは、体重が減るにつれて消費カロリーも下がっていくからです。
代謝が下がる理由は、大きく分けて2つあります。
- 体が省エネになり、熱産生などの消費が下がる
- 体重や組織量が減ることで、維持に必要なエネルギーが下がる
体が小さくなれば、それを維持するために必要なカロリーも少なくなります。
つまり、ダイエット開始時に痩せていたカロリー設定でも、体重が落ちた後には維持カロリーに近づいてしまうことがあります。
厳しいカロリー制限では代謝低下も大きくなる
過去の半飢餓実験では、厳しいカロリー制限によって基礎代謝が大きく低下したことが報告されています。
また、大幅な減量を行った人では、体重減少に伴って安静時代謝が大きく低下するケースもあります。
もちろん、一般的なダイエットで必ずそこまで大きく代謝が下がるわけではありません。
しかし、体重が落ちれば消費カロリーが下がることは避けられません。
そのため、ダイエット中は最初に決めたカロリーをずっと続けるのではなく、体重の変化に合わせて定期的に見直す必要があります。
カロリー制限を成功させるために必要なこと
カロリー制限を成功させるには、最初のカロリー設定だけでなく、その後の調整が重要です。
特に意識したいのは、週あたり体重の何%が落ちているかを見ることです。
目安は、週あたり体重の0.7%前後です。
例えば体重70kgの人であれば、週あたり約0.5kg程度の減少が目安になります。
これよりも全く減っていない場合は、摂取カロリーが高すぎる可能性があります。
逆に、体重が急激に落ちすぎている場合は、筋肉量の減少や体調不良につながる可能性があります。
毎週の体重だけで判断しない
体重は毎週きれいに落ちるわけではありません。
1週間まったく体重が動かず、次の週に一気に落ちることもあります。
2週間ほど停滞して、その後に体重が大きく落ちることもあります。
これは水分量、塩分量、糖質量、便通、睡眠、ストレスなどの影響を受けるためです。
そのため、1週間だけの変化で判断するのではなく、数週間の平均で見ることが大切です。
目安としては、2〜3週間の体重推移を見て、平均的に週0.7%前後で落ちているかを確認しましょう。
体重が減らない時の見直し方
カロリー制限をしているのに体重が落ちない場合は、次の順番で見直してみてください。
1. 摂取カロリーを正確に記録する
まずは、食べたものをできるだけ正確に記録します。
調味料、油、間食、飲み物、外食の量も見落としやすいポイントです。
特にダイエット中は、少量のつまみ食いや飲み物のカロリーが積み重なることがあります。
2. 基礎代謝の計算式を見直す
ハリス・ベネディクト方程式で計算している場合、日本人では高めに出ている可能性があります。
日本人向けの推定に近い式を使う、もしくは最初から少し低めに見積もることで、現実的なカロリー設定に近づけやすくなります。
3. 生活強度指数を低めに設定する
運動をしている人ほど、生活強度指数を高く設定しがちです。
しかし、運動による疲労でNEATが下がっている可能性もあります。
迷った場合は、高めではなく低めの生活強度指数から始める方が、カロリー制限は成功しやすくなります。
4. 2〜3週間ごとに摂取カロリーを調整する
体重が落ちていない場合は、摂取カロリーを少し下げる必要があります。
逆に体重が落ちすぎている場合は、摂取カロリーを少し上げることも必要です。
大切なのは、最初に決めたカロリーに固執しないことです。
体重が変われば、消費カロリーも変わります。
だからこそ、ダイエット中は定期的にカロリー設定を更新する必要があります。
まとめ:カロリー制限で痩せない原因は「消費カロリーの見積もり」にある
カロリー制限は、正しく行えば体脂肪を落とすために有効な方法です。
しかし、失敗する人の多くは、摂取カロリーではなく消費カロリーの見積もりでミスをしています。
基礎代謝を高く見積もる。
生活強度指数を高く設定しすぎる。
運動した分だけ消費カロリーが増えると思い込む。
体重が減って消費カロリーが下がっているのに、カロリー設定を更新しない。
こうしたズレが積み重なることで、自分ではカロリーを抑えているつもりでも、実際には脂肪が落ちるほどのマイナスカロリーを作れていないことがあります。
カロリー制限を成功させるポイントは、次の3つです。
- 摂取カロリーを正確に把握する
- 消費カロリーを高く見積もりすぎない
- 体重の変化に合わせて定期的にカロリーを見直す
ダイエットは、ただ食べる量を減らせばいいわけではありません。
筋肉を残しながら脂肪を落とすには、自分の体重変化を見ながら、適切なペースで調整していくことが大切です。
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