筋力を限界まで高めるピリオダイゼーションの科学

筋力を高めたいと考えたとき、ただ重い重量を扱い続ければいいと思われがちです。

もちろん高重量トレーニングは筋力向上に重要です。しかし、筋力は「重いものに慣れること」だけで決まるわけではありません。

筋力を最大限に高めるためには、筋肥大によって筋肉そのものを大きくすることと、高重量を効率よく扱えるように神経系を適応させることの両方が必要です。

そのために生まれた考え方が、ピリオダイゼーションです。

目次

ピリオダイゼーションとは?

ピリオダイゼーションとは、筋力や筋肉の適応を最大化するために、トレーニングの強度・ボリューム・頻度を計画的に変化させる方法です。

簡単に言うと、毎回同じ重量・同じ回数・同じセット数でトレーニングするのではなく、目的に合わせてトレーニング内容を段階的に組み替える考え方です。

ピリオダイゼーションは、特にパワーリフティングや競技スポーツの世界でよく使われてきました。理由は、最大筋力を高めるために非常に相性が良いからです。

筋力は筋肥大と神経適応で決まる

筋力を決める大きな要素は、筋肥大と神経適応です。

筋肥大とは、筋肉そのものが大きくなることです。筋肉量が増えれば、発揮できる力の土台が大きくなります。

一方で神経適応とは、筋肉をより効率よく動員できるようになることです。高重量を扱う練習を重ねることで、より多くの筋線維を一度に使えるようになり、重い重量を挙げやすくなります。

つまり筋力を高めるには、筋肉を大きくするトレーニングと、高重量に慣れるトレーニングの両方が必要です。

高重量トレーニングだけでは不十分な理由

筋力を高めるうえで、高重量トレーニングは非常に重要です。

これは「特異性の原理」と呼ばれる考え方が関係しています。重い重量を挙げる能力を高めたいなら、実際に重い重量を扱う練習が必要になります。

たとえば、1〜6回程度の低回数・高重量トレーニングは、10〜20回、20〜30回のような高回数トレーニングよりも最大筋力を高めやすい傾向があります。

しかし、高重量トレーニングだけを続ければ筋力が最大化されるかというと、そうではありません。

高重量トレーニングは神経適応には優れていますが、トレーニングボリュームを稼ぎにくいという欠点があります。

1回や2回しか挙げられないような高重量では、セット間の休憩も長くなり、総レップ数や総負荷量を増やしにくくなります。その結果、筋肥大の刺激が不足しやすくなります。

筋肥大にはボリュームが重要

筋肉を大きくするためには、ある程度のトレーニングボリュームが必要です。

ボリュームとは、簡単に言えば「どれだけの量のトレーニングを行ったか」です。一般的には、重量・回数・セット数の合計で考えられます。

ボディビル式のトレーニングでは、8〜12回程度の中回数で複数セットを行うことが多く、筋肥大に必要なボリュームを稼ぎやすい特徴があります。

一方で、パワーリフター式の高重量・低回数トレーニングは神経適応には優れていますが、同じだけのボリュームを稼ごうとすると非常に時間がかかります。

実際に、同じボリュームになるように高重量低回数トレーニングとボディビル式トレーニングを比較した研究では、筋肥大の効果は同程度でも、高重量低回数のグループはトレーニング時間が大きく増えたと報告されています。

つまり、高重量だけで筋肥大に必要なボリュームを確保しようとすると、効率が悪くなりやすいということです。

ピリオダイゼーションの基本は「筋肥大してから神経適応」

筋力を高めるには、筋肥大と神経適応の両方が必要です。

そこで考えられたのが、まず筋肥大を狙う期間を作り、その後に高重量で神経適応を高めるという流れです。

これが、ピリオダイゼーションの基本的な考え方です。

前半では8〜12回、場合によってはそれ以上の回数でボリュームを確保し、筋肉量を増やすことを狙います。

後半では2〜6回、さらにピークに近い時期では1〜3回程度の高重量トレーニングを行い、神経系を高重量に適応させていきます。

このように、時期によって目的を変えることで、筋肥大と神経適応の両方を狙うことができます。

線形ピリオダイゼーションとは?

線形ピリオダイゼーションとは、時間の経過とともにボリュームを下げ、強度を上げていく方法です。

たとえば、最初の数週間は8〜20回程度の高ボリュームトレーニングを行い、筋肥大を狙います。

次の段階では2〜6回程度の中〜高強度トレーニングに移行し、筋力向上を狙います。

最後の段階では1〜3回程度の超高強度トレーニングを行い、最大筋力のピークを作っていきます。

線形ピリオダイゼーションは、ボリュームを徐々に減らし、強度を徐々に上げていくため、非常に分かりやすい方法です。

線形ピリオダイゼーションの例

第1フェーズ:8〜12回以上の高ボリュームで筋肥大を狙う
第2フェーズ:4〜6回程度で筋力を高める
第3フェーズ:1〜3回程度の高重量で最大筋力を高める

このように、筋肉を作る期間から、重い重量に慣れる期間へと段階的に移行していきます。

線形ピリオダイゼーションの弱点

線形ピリオダイゼーションには分かりやすいメリットがありますが、弱点もあります。

それは、高重量フェーズに入ったときに、前半で得た筋肥大の刺激が減ってしまう可能性があることです。

高重量・低回数の時期が長く続くと、ボリュームが少なくなり、筋肥大に必要な刺激が不足する可能性があります。

そこで生まれたのが、非線形ピリオダイゼーションです。

非線形ピリオダイゼーションとは?

非線形ピリオダイゼーションとは、より短いスパンで強度やボリュームを変化させる方法です。

代表的なものに、DUPがあります。DUPとは、Daily Undulating Periodizationの略で、日ごとにトレーニング内容を波のように変化させる方法です。

たとえば、1週間の中で次のように組みます。

月曜日:筋肥大フェーズとして高ボリューム

水曜日:パワーフェーズとして高強度・低ボリューム

金曜日:筋力フェーズとして中強度・中ボリューム

このように、1週間の中で筋肥大・パワー・筋力を狙う日を分けることで、筋肥大の刺激と神経適応の刺激を両方入れることができます。

DUPでは高重量の日を真ん中に置くと組みやすい

DUPを組むときは、高ボリュームの日の直後に、最も筋ダメージが少ない高重量・低ボリュームの日を置くと、回復の面で有利になる可能性があります。

高ボリュームトレーニングは筋肥大に有効ですが、筋肉へのダメージや疲労が大きく、回復に時間がかかります。

一方で、高重量・低ボリュームのトレーニングは神経系への負荷は大きいものの、総レップ数が少ないため、筋肉そのものへのダメージは比較的少なくなりやすいです。

そのため、月曜日に高ボリューム、水曜日に高重量・低ボリューム、金曜日に中ボリューム・中強度という流れにすると、疲労を管理しながらトレーニング量を確保しやすくなります。

ピリオダイゼーションは完璧に組まなくてもいい

ピリオダイゼーションと聞くと、非常に細かく計画を立てなければいけないと思うかもしれません。

しかし、実際にはある程度柔軟に考えても問題ない可能性があります。

フレキシブルDUPという考え方では、筋肥大・筋力・パワーのセッションを1週間の中で全て行うことを条件に、その日のコンディションに合わせて順番を変えます。

たとえば、疲労が強い日は高ボリュームの日を避け、調子が良い日に高重量を扱うという形です。

研究では、通常のDUPとフレキシブルDUPを比較しても、筋力や筋肥大の結果に大きな差が出なかった報告もあります。

つまり、ピリオダイゼーションは細かく考えすぎるよりも、強度・ボリューム・頻度を大きく外さず、継続できる形で組むことが重要です。

線形と非線形はどちらが優れているのか?

線形ピリオダイゼーションと非線形ピリオダイゼーションのどちらが優れているのかは、目的やトレーニング歴によって変わります。

長期的にピークを作りたい場合に分かりやすいのが線形ピリオダイゼーションは、、最大筋力を狙う時期を設定しやすい方法です。

非線形ピリオダイゼーションは、1週間の中で複数の刺激を入れられるため、筋肥大と筋力向上の刺激を同時に維持しやすい方法です。

現在では、線形と非線形を組み合わせた混合モデルも使われています。

長い期間で見るとボリュームを下げながら強度を上げていき、短い期間では週ごと・日ごとにボリュームと強度を波のように変化させる方法です。

筋肥大目的ならボリュームが最重要

ピリオダイゼーションは筋力向上には有効な可能性が高いですが、筋肥大だけを目的にする場合は、最も重要なのはボリュームです。

ボリュームが同じであれば、通常のトレーニング、線形ピリオダイゼーション、非線形ピリオダイゼーションで筋肥大効果に大きな差が出ない可能性があります。

そのため、見た目作りや筋肉量アップが主目的の場合は、ピリオダイゼーションを難しく考えるよりも、適切なセット数・回数・頻度を継続することが大切です。

一方で、ベンチプレスやスクワットなどの最大重量を伸ばしたい場合は、ピリオダイゼーションを取り入れる価値があります。

筋力を高めたい人におすすめの考え方

筋力を高めたい場合は、次のような流れで考えると分かりやすくなります。

まず、筋肥大を狙う期間を作ります。8〜12回程度を中心に、ある程度ボリュームを確保して筋肉量を増やします。

次に、4〜6回程度のやや高重量を扱い、筋力向上に寄せていきます。

最後に、1〜3回程度の高重量を扱い、最大筋力の発揮に慣れていきます。

週単位で組む場合は、高ボリュームの日、高重量の日、中強度の日を分けることで、筋肥大と神経適応の両方を狙いやすくなります。

ただし、疲労が強い状態で高重量を扱うとフォームが崩れやすく、ケガのリスクも高まります。コンディションを見ながら、無理なく調整することが重要です。

まとめ

ピリオダイゼーションとは、筋力や筋肉の適応を最大化するために、強度・ボリューム・頻度を計画的に変化させるトレーニング方法です。

筋力は筋肥大と神経適応によって決まります。

高重量トレーニングは神経適応に有効ですが、ボリュームを稼ぎにくいという欠点があります。

一方で、ボディビル式の中回数・高ボリュームトレーニングは筋肥大に有効ですが、最大筋力の発揮練習としては不十分になることがあります。

そのため、筋力を最大限に高めたい場合は、筋肥大を狙う期間と高重量に慣れる期間を分けることが有効です。

線形ピリオダイゼーションでは、長期的にボリュームを下げながら強度を上げていきます。

非線形ピリオダイゼーションでは、1週間の中で高ボリュームの日、高重量の日、中強度の日を分けて行います。

筋肥大だけを目的にするなら、ピリオダイゼーションそのものよりも、総ボリュームの管理が重要です。

しかし、筋力を本気で高めたい人にとって、ピリオダイゼーションは非常に有効な考え方です。

「重い重量を挙げたい」「ベンチプレスやスクワットの記録を伸ばしたい」「筋肉をつけながら筋力も高めたい」という方は、ただ毎回限界まで追い込むのではなく、強度とボリュームを計画的に変化させていきましょう。

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