筋トレは追い込むべき?RIRと筋肥大・回復の関係を科学的に解説

筋トレをしていると、「追い込んだ方が筋肉は成長するのか」「追い込まない方が回復しやすくて効率が良いのか」という疑問を持つ方は多いと思います。

近年は、エビデンスを重視する流れの中で「筋トレは毎回限界まで追い込まない方が良い」という考え方も広がっています。たしかに、無理に潰れるまで行うトレーニングは疲労やフォームの乱れ、関節への負担につながる可能性があります。

しかし、だからといって「追い込まなくても同じ」「余力を残した方が絶対に良い」と考えるのは少し危険です。実際には、筋肥大を目的とする場合、ある程度しっかり追い込むことには明確なメリットがあります。

今回の記事では、筋トレにおける「追い込む」とは何か、RIRと筋肥大の関係、セット数とボリュームの考え方、さらに「追い込むと回復が遅くなる」という反論について、専門的に解説していきます。

目次

結論:筋肥大を狙うなら、基本的には追い込む意識を持った方が良い

結論から言うと、筋肥大を目的にするなら、基本的には「追い込む意識」を持ってトレーニングした方が良いと考えられます。

ただし、ここで言う「追い込む」とは、毎セット必ず潰れるまで行う、フォームが崩れても無理やり挙げる、関節が痛くても続ける、という意味ではありません。

現実的におすすめしたいのは、「もう次の1回は上がらないだろう」と自分で判断できるところまで行うことです。つまり、主観的に0RIRを目指すということです。

RIRとは「Reps In Reserve」の略で、日本語では「あと何回できたか」という意味です。たとえば、あと2回できそうなところでセットを終えた場合は2RIR、もう1回もできなさそうなところで終えた場合は0RIRです。

筋肥大を狙う場合、このRIRが0に近いほど、つまり限界に近いほど筋肥大効果が高くなる可能性が示されています。

「追い込まない方が良い」という考え方の落とし穴

最近は「筋トレは追い込まない方が良い」という意見もよく見られます。その理由としてよく挙げられるのが、追い込むと疲労が強くなり、回復が遅れ、次回のトレーニングの質が落ちるというものです。

この考え方自体は完全に間違いではありません。実際、限界まで追い込むことで筋損傷や疲労が増え、回復に時間がかかる可能性はあります。

しかし、ここで重要なのは、多くの人が思っているほど実際には追い込めていないという点です。

「自分では限界までやった」と思っていても、実際にはまだ数回できる余力が残っているケースは非常に多いです。特に一人でトレーニングしている場合、本当の限界まで到達するのは簡単ではありません。

そのため、「追い込まない方が良い」と考えて最初から2RIRや3RIRを狙うと、実際には5RIR、場合によっては10RIR近く残してしまう可能性があります。これでは筋肥大に必要な刺激が不足するかもしれません。

RIRが0に近いほど筋肥大しやすい可能性がある

近年のメタ分析では、RIRと筋肥大の関係が調べられています。その中では、RIRが0に近づくほど筋肥大の効果量が高くなる傾向が示されています。

ここで大事なのは、単に「追い込めばレップ数が増えるからボリュームが増える」という話ではない点です。研究では、ボリュームの影響を別の要素として考慮したうえで、RIRが筋肥大にどう関係するかが分析されています。

つまり、同じようなボリュームであっても、より限界に近いセットの方が筋肥大に有利になる可能性があるということです。

もちろん、これは「追い込まなければ筋肥大しない」という意味ではありません。2RIRや4RIRでも筋肉は成長します。昔ながらの「ノーペイン・ノーゲイン」のように、苦しくなければ意味がないという考え方も極端です。

しかし反対に、「追い込んでも追い込まなくても全く同じ」と考えるのも正確ではありません。RIRを連続的なものとして見ると、0RIRに近い方が筋肥大効果は高くなる可能性があります。

筋肥大におけるボリュームは「追い込んだセット数」と考えるべき

筋肥大では、トレーニングボリュームが重要だとよく言われます。ボリュームにはいくつかの考え方があります。

代表的なのは、重量×回数×セット数で表すロードボリュームです。たとえば、60kgで10回を3セット行えば、60×10×3で1800kgのボリュームになります。

しかし、筋肥大を考えるうえでは、単純なロードボリュームだけでは不十分です。なぜなら、同じ重量と回数でも、限界に近いセットなのか、かなり余力を残したセットなのかで刺激の質が変わるからです。

筋肥大において重要なボリュームは、単なる総重量ではなく「ハードセット」、つまり十分に追い込まれたセット数だと考えられます。

実際、週あたりのセット数が増えるほど筋肥大しやすいという研究がありますが、その研究に含まれている多くのトレーニングは、かなり限界に近い形で行われています。

つまり、「週のセット数が増えるほど筋肥大する」という話は、より厳密に言えば「週あたりの追い込んだセット数が増えるほど筋肥大しやすい」と解釈する方が自然です。

追い込んでいるつもりでも、多くの人は追い込めていない

筋トレで非常に重要なのが、自分の限界を正確に把握することです。

ある研究では、筋トレ経験者の男性に「10回が限界だと思う重量」でベンチプレスを行ってもらいました。すると、実際には10回で限界になる人は少なく、多くの人が12回、15回、19回以上できてしまいました。

これは非常に重要な結果です。なぜなら、筋トレ経験者であっても、自分の10RM、つまり10回が限界の重量を正確に把握できていない人が多いということだからです。

自分では「これは10回が限界の重さだ」と思っていても、実際にはまだかなり余力が残っている。こういうことは現場でもよくあります。

この状態で「2RIRを残そう」と考えると、実際には2RIRどころではなく、5RIRや10RIR残してしまう可能性があります。そうなると、筋肥大に必要な刺激としては弱くなってしまいます。

だからこそ、筋肥大を目的にする人は、基本的には「0RIRを目指す」くらいの意識で行う方が現実的です。0RIRを目指しても、実際には1RIRや2RIR程度で終わっていることも多いためです。

「追い込むと回復が遅くなる」は本当か?

「筋トレは追い込まない方が良い」と言われる大きな理由の一つが、回復の遅れです。

ある研究では、限界まで追い込むトレーニングを行った場合、48時間後も筋損傷の指標が高く、回復に72時間ほどかかったとされています。一方で、余力を残したトレーニングでは48時間後には回復していたとされています。

この結果だけを見ると、「追い込むと回復が遅れるから、追い込まない方が良い」と考えたくなります。

しかし、この研究には大きな注意点があります。それは、被験者がかなり強く励まされながらトレーニングを行っていたという点です。

研究では「強い言葉による励まし」が行われており、イメージとしては、周囲から強烈に声をかけられながら、本当に限界まで追い込むような状況です。

これは、一般的に一人でジムに行ってトレーニングしている人の状況とはかなり違います。

一人でトレーニングしている人が、「もう上がらないだろう」と主観的に判断してセットを終える場合、研究で行われたような本当の限界まで到達しているとは限りません。

そのため、研究で示されたような強い疲労や回復の遅れが、一般的なトレーニングにもそのまま当てはまるとは言い切れません。

5RIRと0RIRの比較だけで考えるのは危険

追い込まないトレーニングの研究では、5RIR程度の大きな余力を残している場合があります。5RIRとは、あと5回できる状態でセットを終えるという意味です。

たしかに5RIRで終えれば疲労は少なく、回復も早くなる可能性があります。しかし、筋肥大を目的とする場合、それだけ余力を残すと刺激が不足しやすくなります。

現実的に多くの人が悩むのは、0RIRか5RIRかではなく、0RIRを目指すのか、1〜2RIRを残すのかという問題です。

そして、1〜2RIRを正確に残せる人は多くありません。特に初心者や中級者では、2RIRを残しているつもりでも、実際にはかなり余裕があることがあります。

そのため、「追い込まない方が回復が早い」という話をそのまま受け取って、常に余力を大きく残すのはおすすめできません。

追い込むとは、必ず潰れるまでやることではない

ここで整理しておきたいのが、「追い込む」という言葉の定義です。

追い込むと言っても、いくつかの意味があります。

物理的にもう挙上できない状態

これは、どれだけ頑張ってもバーやダンベルが上がらない状態です。いわゆる完全な限界です。専門的には、モーメンタリー・マスキュラー・フェイラーに近い考え方です。

チーティングを使わないと挙げられない状態

正しいフォームではもう挙げられないが、反動や体の使い方を変えればなんとか挙げられる状態です。この状態で無理をすると、フォームが崩れ、関節や腰への負担が増える可能性があります。

主観的にもう次は上がらないと判断する状態

現場で最も使いやすいのは、この定義です。自分の感覚として「次の1回は厳しい」「もう上がらないだろう」と判断したところでセットを終えるという考え方です。

テンポやフォームを維持できなくなる状態

決めたテンポやフォームを保てなくなった時点でセットを終える考え方です。これはタスクフェイラーに近い考え方です。

Evolveとしておすすめしたいのは、危険なフォームで無理に潰れるまで行うことではありません。基本は、主観的に「もう次は上がらない」と判断できるところまで行うことです。

おすすめは「主観的0RIR」を目指すこと

筋肥大を目的にする場合、おすすめは主観的0RIRを目指すことです。

主観的0RIRとは、自分の感覚として「もう次の1回は上がらないだろう」と判断するところまで行うことです。

これは、本当に物理的に完全な限界まで潰れることとは少し違います。多くの人は、主観的に0RIRだと思っても、実際には1〜2回程度の余力が残っていることがあります。

しかし、それで十分です。むしろ、筋肥大を狙う一般的なトレーニングでは、このくらいの追い込み方が現実的です。

最初から「2回残して終わろう」と考えると、実際にはもっと余力が残ってしまう可能性があります。だからこそ、特に自分の限界把握に自信がない人は、0RIRを目指すくらいでちょうど良いケースが多いです。

部位を週1〜2回しか鍛えないなら、追い込まないメリットは小さい

「追い込むと回復が遅くなるから、追い込まない方が良い」という考え方は、同じ部位を高頻度で鍛える場合には一定の意味があります。

たとえば、同じ部位を週3回以上鍛える場合、毎回限界まで追い込みすぎると疲労が抜けず、次回のパフォーマンスが落ちる可能性があります。

しかし、同じ部位を週1〜2回しか鍛えない場合は話が変わります。仮にかなり追い込んだとしても、次にその部位を鍛えるまでに数日空くため、回復の問題がそこまで大きくならないことが多いです。

実際、限界まで追い込んだとしても、3日後にはパフォーマンスや筋損傷の指標がベースラインに戻るという報告もあります。

そのため、週1〜2回の頻度で部位を分けて鍛えている人にとっては、「回復を早めるためにあえてかなり余力を残す」という戦略のメリットはそこまで大きくない可能性があります。

ただし、全ての種目で毎回限界を狙う必要はない

ここまで「追い込む意識は大切」と説明してきましたが、全ての種目で毎回限界を狙うべきという意味ではありません。

特にスクワット、デッドリフト、ベンチプレスなどの高重量コンパウンド種目では、限界に近づくほどフォームの乱れや怪我のリスクが高くなります。

このような種目では、完全に潰れるまで行うよりも、フォームを維持できる範囲で強度を高めることが大切です。

一方で、マシン種目や単関節種目は比較的安全に追い込みやすいです。たとえば、レッグエクステンション、レッグカール、ラットプルダウン、ケーブル種目、サイドレイズ、アームカールなどは、フォームを管理しながら限界に近づけやすい種目です。

つまり、追い込み方は種目によって変えるべきです。筋肥大を狙うなら、特に安全性の高い種目ではしっかり追い込み、リスクの高い種目ではフォームを最優先にするのが現実的です。

関節の痛みや違和感がある場合は追い込まない

筋肥大には追い込むことが有効ですが、関節の痛みや違和感がある場合は別です。

肩、肘、腰、膝などに痛みがある状態で無理に追い込むと、筋肉ではなく関節や腱に負担が集中することがあります。

筋肉のきつさと関節の痛みは別物です。筋肉が熱くなる、張る、力が出なくなるという感覚はトレーニング刺激として問題ないことが多いですが、鋭い痛みや関節の違和感がある場合は中止すべきです。

「追い込む」とは、痛みを我慢することではありません。安全なフォームと可動域の中で、対象筋にしっかり負荷をかけることが大前提です。

筋トレはメンタル面でも追い込む価値がある

追い込むトレーニングには、筋肥大だけでなくメンタル面でのメリットもあります。

もちろん、精神論だけで筋肉がつくわけではありません。しかし、自分の限界に近いところまで力を出し切る経験は、トレーニングの充実感や達成感につながります。

毎回余裕を残しすぎるトレーニングは、体への刺激だけでなく、トレーニングそのものの楽しさや達成感が薄くなることもあります。

筋トレは、単に重量や回数をこなす作業ではありません。昨日の自分よりも強くなる、自分の限界を少しずつ更新していくことにも大きな価値があります。

ただし、これは根性論で無茶をするという意味ではありません。安全な範囲で、自分の限界に近づく努力をすることが大切です。

実際のトレーニングではどう取り入れるべきか

筋肥大を目的にする場合、実際のトレーニングでは次のように考えると分かりやすいです。

初心者はまずフォームを優先する

初心者の場合、最初から限界まで追い込むことよりも、正しいフォームを覚えることが優先です。フォームが安定していない状態で追い込むと、対象筋に効かせる前にフォームが崩れてしまいます。

まずは狙った筋肉に負荷を乗せる感覚を身につけ、そのうえで少しずつ限界に近づけていくことが大切です。

中級者以上は0RIRを目指すセットを作る

ある程度トレーニングに慣れている人は、種目によって0RIRを目指すセットを作ると良いです。

全セットを限界まで行う必要はありませんが、少なくともメイン種目や最後のセットでは、主観的に「もう次は上がらない」と思えるところまで行うことで、筋肥大に必要な刺激を確保しやすくなります。

安全性の高い種目でしっかり追い込む

マシン種目やケーブル種目は、比較的安全に追い込みやすいです。こうした種目では、主観的0RIRを目指しやすく、筋肥大目的との相性も良いです。

逆に、高重量のフリーウエイト種目では、フォームが大きく崩れる前に止める判断も必要です。

週のセット数も意識する

筋肥大には、1回の追い込みだけでなく、週あたりのハードセット数も重要です。

どれだけ1セットを頑張っても、週全体のセット数が少なすぎると刺激が足りないことがあります。反対に、追い込みすぎたセットを大量に入れすぎると、疲労が抜けなくなることもあります。

大切なのは、週単位で「質の高い追い込んだセット」を積み重ねることです。

まとめ:追い込まない方が良いと決めつけるのは早い

筋トレは、ただ苦しければ良いわけではありません。昔ながらの「追い込まなければ意味がない」という考え方は極端です。

しかし、最近よく見られる「科学的には追い込まない方が良い」という考え方も、少し一面的です。

RIRが0に近いほど筋肥大しやすい可能性があること、筋肥大におけるボリュームは単なる総重量ではなく追い込んだセット数として考えるべきこと、そして多くの人は自分が思っているほど追い込めていないことを考えると、筋肥大を狙うなら追い込む意識はかなり重要です。

おすすめは、危険なフォームで潰れるまで行うことではなく、主観的に「もう次の1回は上がらない」と思えるところまで行うことです。

特に一人でトレーニングしている人や、自分の限界把握に自信がない人は、最初から余力を残そうとするよりも、0RIRを目指すくらいの意識で行う方が、結果的にちょうど良い刺激になる可能性があります。

ただし、関節の痛みがある場合や、フォームが大きく崩れる場合は無理に追い込む必要はありません。筋肥大に必要なのは、無茶ではなく、対象筋に対して安全に強い刺激を与えることです。

パーソナルジムEvolveでは、目的や経験値、フォーム、体の状態に合わせて、どこまで追い込むべきかを判断しながらトレーニングを行います。筋肉をしっかり成長させたい方、自己流で追い込み方が分からない方は、正しいフォームと強度設定を身につけることが大切です。

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