ダイエットがうまくいかない理由は、大きく分けると2つあります。
1つ目は、カロリー計算そのものが意外と難しいことです。食品の量、調味料、外食、間食などを正確に把握するのは、思っている以上に難しいものです。
そして2つ目が、仮にカロリー計算ができていたとしても、その決めたカロリーを守り続けることが難しいということです。
今回は、この2つ目に関わる「脳の理由付け」について解説します。
ダイエット中に、こんな経験はありませんか?
- 今日は仕事を頑張ったから、ご褒美に食べてもいいと思った
- たまには食べた方が代謝が戻ると思った
- 1回食べすぎたから、今日はもうチートデイにしようと思った
- 明日からまた頑張ればいいと思って食べすぎた
これらは本人にとっては合理的な判断に感じます。しかし実際には、脳が「食べるための理由」を後から作っている可能性があります。
脳は自分の行動に理由を作る
人間の脳には、自分の行動や感情に対して理由を作る働きがあります。これを「インタープリター」と呼ぶことがあります。
インタープリターとは、自分がなぜその行動をしたのかを、自分が知っている情報の中からそれっぽく説明しようとする脳の働きです。
ここで重要なのは、脳が作った理由が必ずしも本当の理由とは限らないということです。
例えば、本当は単に食べたいだけなのに、脳は「今日は頑張ったから」「代謝を戻すために必要だから」「ストレスを溜めすぎる方が良くないから」といった理由を作ります。
しかも、その理由を本人自身が本当に合理的だと感じてしまうことがあります。
脳分断患者の研究からわかる「後付けの理由」
脳の理由付けを示す有名な例として、脳分断患者を対象にした研究があります。
脳分断患者とは、左右の脳をつなぐ脳梁という部分が分断されている人のことです。左右の脳で情報のやり取りができない状態です。
研究では、左右の目に別々の絵を見せました。片方には雪景色、もう片方には鶏の足の絵を見せ、それぞれに関連するものを選んでもらいました。
すると、被験者は雪景色に対してスコップを選び、鶏の足に対して鶏の頭を選びました。
その後、「なぜそれを選んだのですか?」と理由を聞きました。
本来であれば、言語を担当する脳は、片方の情報しか知らないため、もう片方の選択理由はわからないはずです。
しかし被験者は、「鶏の頭は鶏の足と関係がある。スコップは鶏小屋を掃除するために必要だから」と説明しました。
つまり、実際には知らないはずの選択理由を、脳がその場で作り出したということです。
このように、人間の脳は自分の行動に対して、後からそれっぽい理由を作ることがあります。
感情や体の反応にも脳は理由を作る
似たような現象は、感情や体の反応でも起こります。
ある研究では、心拍数を上げる薬を投与した後に、好きな人やイライラする相手と会わせる実験が行われました。
薬の作用を知らされていた人は、「薬のせいで心拍数が上がっている」と正しく理解しました。
一方で、薬の作用を知らされていなかった人は、「好きな人に会ってドキドキした」「イライラする相手に会って怒りを感じた」と説明しました。
実際には薬の作用で体が興奮していたにも関わらず、脳はその興奮の理由を、自分が置かれた状況の中から作ったのです。
これも、脳が理由を後付けするわかりやすい例です。
ダイエット中の「食べる理由」も脳が作っている
この脳の働きは、ダイエット中にも強く関係します。
ダイエット中は食事量を制限しているため、当然ながら食べたい気持ちが出てきます。そのとき脳は、ただ「食べたい」と感じるだけではなく、食べてもいい理由を作り始めます。
例えば、次のような理由です。
- たまには食べた方が代謝が戻る
- ストレスを溜めすぎる方が体に悪い
- 今日は頑張ったから食べてもいい
- 1日くらい食べすぎても問題ない
- ここまで食べたなら、今日はチートデイにした方がいい
もちろん、すべてが完全に間違いというわけではありません。
長期間のカロリー制限で代謝が落ちることはありますし、精神的なストレスを管理することも大切です。
しかし問題は、そういった一部の正しい知識を利用して、脳が「食べすぎてもいい理由」を作ってしまうことです。
本当は単に食べたいだけなのに、そこにもっともらしい理屈がつくことで、自分でも納得して食べすぎてしまいます。
チートデイは食べすぎを正当化しやすい
チートデイとは、ダイエット中に一時的に好きなものを多く食べる日のことです。
「たまにはたくさん食べた方が代謝が戻る」「チートデイを入れた方がダイエットは成功する」と言われることもあります。
しかし、チートデイという言葉は、食べすぎを正当化する理由になりやすい面があります。
代謝を戻す目的であれば、無計画にドカ食いするよりも、一定期間カロリーを管理しながら増やすリフィードやダイエットブレイクの方が現実的です。
リフィードとは、主に炭水化物を中心に摂取カロリーを一時的に増やす方法です。ダイエットブレイクとは、一定期間メンテナンスカロリー付近まで摂取量を戻し、ダイエットの疲労を抜く方法です。
一方で、一般的にイメージされるチートデイは、好きなものを好きなだけ食べる「ドカ食い」に近くなりやすいです。
この場合、代謝を戻すというよりも、単に食べたい欲求を満たす日になってしまうことがあります。
真実と嘘が混ざると、自分を騙しやすい
脳の理由付けで厄介なのは、完全な嘘ではなく、一部の真実が混ざることです。
例えば、「ダイエット中に代謝が落ちることがある」というのは事実です。
しかし、そこから「だから今日は好きなだけ食べた方がいい」と考えるのは、かなり飛躍があります。
また、「ストレスを溜めすぎるのは良くない」というのも事実です。
しかし、そこから「だから今日は制限せずに食べていい」と考えると、ダイエットの継続が難しくなります。
このように、脳は一部の正しい情報を使って、食べるための理由を作ることがあります。
完全に間違った理由であれば気づきやすいですが、少し正しい要素が入っていると、自分でも納得してしまいやすくなります。
体脂肪が減るほど食べる理由は増えやすい
ダイエットが進んで体脂肪が減ってくると、食べたい気持ちは強くなりやすくなります。
その理由の1つが、レプチンというホルモンです。
レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、体脂肪量やエネルギー状態を脳に伝える役割があります。
体脂肪が減るとレプチンの分泌も低下しやすくなります。すると脳は、体重をこれ以上減らさないように食欲を高めようとします。
ここで多くの人がイメージするのは、単純に「強烈な空腹感が出る」という状態かもしれません。
もちろん空腹感が強くなることもありますが、実際にはそれだけではありません。
食べるための理由が増える、という形で現れることもあります。
例えば、体重が停滞したときに「これ以上カロリーを下げるのは良くない」「一度しっかり食べた方が痩せるかもしれない」と考え始めることがあります。
もちろん、本当に調整が必要な場合もあります。
しかし、ダイエットが進んでいる時期ほど、脳は食べる方向に判断を傾けやすいということは知っておいた方がいいです。
体重が落ちない時ほど判断がブレやすい
ダイエット中に特に注意したいのが、体重が落ちなくなったときです。
体重が順調に落ちているときは、今の食事を続ければいいので判断はシンプルです。
しかし体重が停滞すると、「カロリーを減らすべきか」「運動を増やすべきか」「一度食べる量を増やすべきか」といった判断が必要になります。
このときに、自分の脳は食べる方向に理由を作りやすくなります。
例えば、次のような考えが出てきます。
- 摂取カロリーが低すぎて痩せないのではないか
- 代謝が落ちているから食べた方がいいのではないか
- 一度チートデイを入れた方がいいのではないか
- 体が省エネになっているから、今日は食べてもいいのではないか
これらは一見すると合理的に聞こえます。
しかし、食べたい気持ちが強くなっている状態で判断すると、都合のいい方向に流されやすくなります。
ダイエット成功のコツは判断を減らすこと
ダイエットを成功させるためには、できるだけその場の判断を減らすことが大切です。
空腹が強いとき、体重が停滞しているとき、ストレスが溜まっているときに判断すると、脳は食べる理由を作りやすくなります。
だからこそ、事前にルールを決めておくことが重要です。
体重が停滞したときのルールを決めておく
例えば、体重が落ちない日があっても、すぐに食事を変える必要はありません。
体重は毎日きれいに落ちるわけではありません。水分量、塩分、便通、睡眠、筋肉の炎症などによって大きく変動します。
そのため、1日や2日の体重変化で判断するのはおすすめできません。
例えば、次のようにルール化しておくと判断がブレにくくなります。
- 毎朝同じ条件で体重を測る
- 1日単位ではなく、週平均で体重を見る
- 2週間ほど体重の平均が変わらなければ調整を考える
- 調整する場合は、いきなり大きく変えず100〜200kcal程度から変える
このように事前に決めておくことで、「今日は食べた方がいいかも」というその場の感情に流されにくくなります。
食べすぎた翌日のルールを決めておく
ダイエット中に一度食べすぎてしまうことは誰にでもあります。
問題は、その翌日です。
1日食べすぎただけなら、翌日から通常の食事に戻せば大きな問題にはなりにくいです。
しかし、「昨日食べすぎたから今日もチートデイにしよう」「ここまで来たら今週は好きに食べよう」となると、ダイエットは大きく崩れます。
そのため、食べすぎた翌日のルールも事前に決めておきましょう。
- 食べすぎた翌日は通常の食事に戻す
- 極端にカロリーを下げて帳尻を合わせようとしない
- 体重増加は水分も含まれるため、数日単位で見る
- 連続して食べすぎないことを最優先にする
食べすぎをゼロにすることよりも、食べすぎを連続させないことの方が重要です。
チートデイよりも計画的なリフィードを考える
ダイエット中に食事量を増やすこと自体が、必ず悪いわけではありません。
長期間のカロリー制限で疲労が溜まっている場合や、トレーニングのパフォーマンスが大きく落ちている場合は、計画的に摂取カロリーを増やすことが有効なケースもあります。
ただし、その場合でも「好きなものを好きなだけ食べるチートデイ」ではなく、目的を持ったリフィードやダイエットブレイクの方が管理しやすいです。
リフィードを行う場合は、脂質を大きく増やすよりも、炭水化物を中心に摂取カロリーを増やす方が現実的です。
また、ダイエットブレイクを入れる場合も、完全に制限を外すのではなく、体重が大きく増えすぎない範囲でメンテナンスカロリー付近を狙う方が安定しやすいです。
大切なのは、「食べたいから食べる」のではなく、「目的があるから計画的に増やす」ということです。
脳の言い訳に気づくだけでも食べすぎは減らせる
食べすぎを防ぐために、まず大切なのは「脳は理由を作る」という事実を知っておくことです。
この知識があるだけでも、食べようとした瞬間に気づけることがあります。
例えば、ダイエット中に「今日は頑張ったから食べてもいい」と思ったとします。
そのときに、「これは本当に必要な判断なのか、それとも食べるための理由付けなのか」と一度考えることができます。
この一呼吸があるだけで、食べすぎを防ぎやすくなります。
食べたくなった時に確認したいこと
食べたい理由が浮かんだときは、次のように確認してみてください。
- これは本当に体に必要な調整なのか
- ただ食べたいだけではないか
- 昨日までの自分なら同じ判断をするか
- この判断は明日後悔しないか
- 事前に決めたルールと合っているか
気持ちそのものが悪いわけではありません。
ただし、食べたい気持ちに理屈をつけて正当化し続けると、ダイエットは進みにくくなります。
ダイエットは意思の強さだけで成功するものではない
ダイエットが続かないと、「自分は意思が弱い」と考えてしまう人が多いです。
しかし、実際には意思の強さだけの問題ではありません。
人間の脳には、自分の行動を正当化する働きがあります。さらに、体脂肪が減ってくると食欲に関わるホルモンも変化します。
つまり、ダイエットが進むほど食べる方向に流されやすくなるのは、ある程度自然な反応でもあります。
だからこそ、意思の力だけで耐えようとするのではなく、仕組みで対策することが大切です。
- 食事内容をある程度固定する
- 摂取カロリーを記録する
- 体重を週平均で見る
- 停滞時のルールを事前に決める
- 食べすぎた翌日の対応を決めておく
このように、判断を減らして機械的に進めることで、脳の言い訳に流されにくくなります。
まとめ
ダイエット中に食べすぎてしまう原因の1つは、脳が食べる理由を作ってしまうことです。
「今日は頑張ったから」「たまには食べた方が代謝が戻るから」「ストレスを溜めすぎる方が悪いから」といった理由は、一見すると合理的に感じます。
しかし、本当はただ食べたいだけなのに、脳が後から理由を作っている場合もあります。
特にチートデイは、食べすぎを正当化しやすい考え方です。
もちろん、計画的なリフィードやダイエットブレイクが有効な場合はあります。しかし、無計画なドカ食いを「ダイエットに必要」と考えてしまうと、減量は進みにくくなります。
ダイエットを成功させるためには、その場の気分で判断しないことが大切です。
体重が停滞したとき、食べすぎた翌日、ストレスが溜まったときのルールを事前に決めておきましょう。
脳は食べる理由を作ります。
だからこそ、「これは本当に必要な判断なのか、それとも食べたいだけなのか」と一度立ち止まることが、ダイエット成功につながります。
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ダイエットは、ただ我慢するだけでは続きません。体重の変化、食事内容、生活リズム、トレーニング状況を見ながら、自分に合った方法で進めることが大切です。
「食べすぎを繰り返してしまう」「チートデイを入れると止まらなくなる」「何をどれくらい食べればいいかわからない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
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