筋肥大を目標にトレーニングしている人のなかには、「筋肉を大きくしたいけれど、扱う重量も伸ばしたい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
一般的に筋肥大を狙うトレーニングでは、8〜12回前後できる重量がよく使われます。一方で、1〜5回程度の高重量トレーニングは、最大筋力を高めたいパワーリフターなどが行うものという印象があるかもしれません。
しかし、筋肥大を優先する人でも、高強度トレーニングを少量だけ取り入れることで、普段のトレーニングのパフォーマンスを高め、筋肥大と筋力の両方を伸ばせる可能性があります。
この記事では、筋肥大と筋力の関係、ピリオダイゼーションの考え方、筋肥大目的でも取り入れやすい高強度ウォームアップの方法を解説します。
レップ数によって得られやすい適応は異なる
筋トレでは、扱う重量やレップ数によって得られやすい適応がある程度変わります。
- 1〜5回:最大筋力を高めやすい
- 6〜12回:筋肥大を狙いやすい
- 15回以上:筋持久力を高めやすい
ただし、これは「1〜5回では筋力しか伸びない」「8〜12回では筋肥大しか起きない」という意味ではありません。
低回数・高重量トレーニングでも筋肥大は起こりますし、中重量でのトレーニングでも筋力は伸びます。あくまで、どの適応をより効率よく得やすいかという話です。
筋肥大を狙う場合は、十分なトレーニング量を確保しやすい6〜12回前後のトレーニングが中心になりやすくなります。一方で、最大筋力を伸ばしたい場合は、より重い重量を扱う練習も必要になります。
筋力は筋肉量だけで決まらない
実は、筋力を高めるうえで重要なのは、筋肉の大きさだけではありません。
筋力には主に、筋肉量と神経系の適応が関係しています。筋肉が太くなれば、より大きな力を発揮できる可能性は高まります。しかし、同じ筋肉量でも、その筋肉をどれだけ効率よく使えるかによって、発揮できる力は変わります。
筋肉は多数の筋繊維から構成されています。重い重量を持ち上げるためには、多くの筋繊維を同時に動員し、強く収縮させる必要があります。
この「筋肉を効率よく使う能力」が、神経系の適応です。高重量トレーニングでは、筋肉を大きくするだけでなく、重い重量を扱うための動作スキルや神経系の適応を高めやすいと考えられています。
ピリオダイゼーションとは
筋肥大と筋力を両方伸ばす方法として、ピリオダイゼーションという考え方があります。
ピリオダイゼーションとは、トレーニングの目的や負荷設定を、期間ごとに計画的に変えていく方法です。
たとえば、最初は8〜12回程度のトレーニングを中心にして筋肥大を狙い、その後に3〜5回程度の高重量トレーニングへ移行して筋力を高めます。
筋肉を増やす期間と、その筋肉を活かして高い筋力を発揮する期間を分けるイメージです。
線形ピリオダイゼーション
線形ピリオダイゼーションは、数か月単位で徐々にレップ数を減らし、重量を上げていく方法です。
最初は8〜12回程度でトレーニング量を確保し、筋肥大を狙います。その後、6回、5回、3回とレップ数を減らしながら重量を高め、最終的には1〜2回程度の高重量トレーニングを行うこともあります。
トレーニング量は徐々に減らしながら、強度を上げていく形です。
非線形ピリオダイゼーション
非線形ピリオダイゼーションは、週や日ごとに負荷設定を変える方法です。
たとえば、ベンチプレスを週3回行う場合は、以下のように分けられます。
- 月曜日:8〜12回で筋肥大を狙う
- 水曜日:4〜6回で筋力を狙う
- 金曜日:1〜3回の高重量に触れる
筋肥大向けのトレーニングと、筋力向けのトレーニングを短い期間で繰り返す方法です。
筋肥大目的なら高重量トレーニングは不要なのか
筋肥大を最優先にする場合、高重量トレーニングを多く入れすぎることにはデメリットもあります。
高重量トレーニングは1セットあたりのレップ数が少なくなります。そのため、筋肥大に必要なトレーニング量を確保するには、セット数を多く行う必要があります。
さらに、高重量を扱う場合はインターバルも長く必要です。3回前後の重量を扱う場合、セット間に3〜5分程度の休憩が必要になることも珍しくありません。
その結果、十分なトレーニング量を確保しようとすると、筋トレ時間が長くなりやすくなります。
筋肥大を目的にする場合は、6〜12回程度で効率よくセット数を積み重ねる方が、時間効率が良いケースも多いです。トレーニング量が同程度であれば、高重量・低回数トレーニングと中重量・中回数トレーニングで、筋肥大の結果に大きな差が出ないこともあります。
そのため、筋肥大だけを目的にするなら、高重量トレーニングのためにトレーニング量を大きく犠牲にする必要はありません。
筋肥大目的でもおすすめの高強度ウォームアップ
筋肥大を優先しながら筋力も伸ばしたい人におすすめなのが、高強度ウォームアップです。
高強度ウォームアップとは、普段の筋肥大向けトレーニングに入る前に、重い重量を少ない回数だけ扱う方法です。
たとえば、ベンチプレスで8〜10回のメインセットを行う前に、90%1RM前後の重量を1〜3回だけ行います。
その後、十分な休憩を取り、普段どおり8〜12回前後のメインセットに入ります。
この方法であれば、高重量トレーニングを何セットも行う必要がありません。筋肥大向けのトレーニング量を大きく減らさずに、重い重量に触れる機会を作れます。
高強度ウォームアップでパフォーマンスが上がる理由
高強度ウォームアップの後に、一時的にパフォーマンスが向上する現象は、PAPEと呼ばれます。
PAPEとは、Post-Activation Performance Enhancementの略で、活動後パフォーマンス増強と考えると分かりやすいです。
重い重量を少量扱うことで、その後のジャンプ、スプリント、ベンチプレス、スクワットなどのパフォーマンスが高まる可能性があります。
メカニズムは完全には解明されていませんが、筋肉や神経系の活性化、筋収縮に関わる反応の変化、心理的な影響などが関係すると考えられています。
実際に重い重量を一度持った後、普段の作業重量に戻ると「いつもの重量が軽く感じる」と感じることがあります。この感覚によって、1セット目や2セット目のレップ数が伸びたり、普段より少し重い重量を扱えたりする可能性があります。
筋肥大を狙ううえでは、普段のメインセットで扱う重量やレップ数が伸びることは大きなメリットです。トレーニングボリュームを増やせれば、筋肥大に必要な刺激をより多く確保できる可能性があります。
高強度ウォームアップはやりすぎないことが重要
まず、高強度ウォームアップでは、重い重量を扱うことでパフォーマンスが上がる可能性がありますが、同時に疲労も発生します。
高強度ウォームアップによる活性化の効果が疲労を上回れば、その後のトレーニングでパフォーマンスが上がります。
しかし、重い重量を何セットも行ったり、限界まで追い込んだりすると、疲労の方が大きくなります。そうなると、メインセットの重量や回数が落ちてしまい、筋肥大に必要なトレーニング量を確保しにくくなります。
筋肥大目的で高強度ウォームアップを行う場合は、「高重量のトレーニングを頑張る」のではなく、「メインセットの質を上げるための準備」と考えることが重要です。
筋肥大目的の高強度ウォームアップのやり方
高強度ウォームアップは、以下の流れで行うのがおすすめです。
- 軽い重量でフォームを確認する
- 徐々に重量を上げる
- 90%1RM前後の重量で1〜3回だけ行う
- 5〜10分ほど休憩する
- 普段の筋肥大向けメインセットに入る
重要なのは、高重量のセットで限界まで追い込まないことです。目安としては、あと1〜2回できそうな余力を残す程度がおすすめです。
RIRで表すと、1〜2RIR程度を目安にすると良いでしょう。
ベンチプレスの実践例
普段、ベンチプレスを70kgで8〜10回行う場合の例です。
- 20kg:10回
- 40kg:5回
- 55kg:3回
- 65kg:1〜2回
- 75kg前後:1〜2回
- 5〜10分休憩
- 70kg:8〜10回をメインセットとして実施
高重量のセットを行った後に、普段の70kgが軽く感じたり、1セット目の回数が伸びたりする場合があります。
反対に、メインセットの回数が明らかに落ちる場合は、高重量セットの重量を下げるか、回数を1回にしてください。
スクワットの実践例
- 自重または軽い重量でフォーム確認
- 50%1RM前後:5回
- 70%1RM前後:3回
- 80%1RM前後:1〜2回
- 90%1RM前後:1〜2回
- 5〜10分休憩
- 普段の8〜12回前後のメインセットへ
スクワットは全身疲労が大きく、腰・膝・股関節への負担も高くなりやすい種目です。フォームが安定していない方や、関節に不安がある方は、無理に90%1RM前後を扱う必要はありません。
高強度ウォームアップを入れる頻度
高強度ウォームアップは、毎回必ず行う必要はありません。
まずは週1回、重量を伸ばしたい種目にだけ取り入れるのがおすすめです。
たとえばベンチプレスを週2回行う場合、1回だけ高強度ウォームアップを入れ、もう1回は通常どおり筋肥大向けのトレーニングを行うとバランスを取りやすくなります。
高重量に慣れていない場合は、最初から90%1RMを扱う必要はありません。80〜85%1RM程度で1〜2回から始め、フォームや関節の状態を確認しながら少しずつ調整しましょう。
筋肥大と筋力を同時に伸ばすためのポイント
筋肥大と筋力を同時に狙う場合、最も重要なのは目的に合ったトレーニング量を確保することです。
筋肥大が目的なら、普段は6〜12回程度のトレーニングを中心にして、十分なセット数を積み重ねましょう。
そのうえで、ベンチプレスやスクワットなどのメイン種目に高強度ウォームアップを少量入れることで、筋力向上の刺激を加えることができます。
高重量トレーニングを長時間行う必要はありません。90%1RM前後の重量を1〜3回だけ扱い、しっかり休憩してから普段の筋肥大向けトレーニングに入るだけでも十分です。
筋肥大向けのトレーニング量を落とさず、普段の重量や回数を伸ばせるなら、筋肥大と筋力の両方を伸ばすきっかけになります。
高強度ウォームアップをおすすめしないケース
高強度ウォームアップは便利な方法ですが、全員におすすめできるわけではありません。
- 肩・肘・腰・膝などに痛みがある
- 高重量を扱うフォームが安定していない
- 筋トレ初心者で1RMの把握ができていない
- 睡眠不足や疲労が強い
- メインセットのパフォーマンスが落ちている
高重量トレーニングは、筋肉だけでなく関節や腱にも大きな負担がかかります。特にベンチプレス、スクワット、デッドリフトなどの高重量種目は、フォームが崩れた状態で無理に行うとケガにつながるリスクがあります。
高強度ウォームアップを入れて痛みが出る、フォームが乱れる、メインセットの質が下がる場合は、すぐに中止してください。
まとめ
筋肥大を目的にする場合、8〜12回前後のトレーニングを中心にすることは非常に有効です。
ただし、筋力も伸ばしたい場合は、高重量トレーニングを完全に避ける必要はありません。
- 90%1RM前後の重量を1〜3回だけ行う
- 高重量セットでは限界まで追い込まない
- 5〜10分ほど休憩してからメインセットに入る
- まずは週1回から試す
- 関節に不安がある場合は無理に行わない
高強度ウォームアップによって、普段の重量が軽く感じたり、レップ数が伸びたりする場合があります。
筋肥大向けのトレーニング量を維持しながら、筋力も高めたい方は、自分のフォームや疲労度を確認しながら試してみてください。
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