筋トレをしている人なら、一度は「筋トレはどこまで追い込むべきなのか?」と考えたことがあると思います。
限界まで追い込むべきなのか、少し余力を残した方がいいのか。筋肥大や筋力アップを目指すうえで、この「努力量」の考え方は非常に重要です。
ただ、筋トレの追い込み具合について調べると、RPE・RIR・速度ロスといった専門用語が出てきます。
これらは簡単に言うと、筋トレでどれくらい努力したのか、どれくらい限界に近いところまで行ったのかを判断するための指標です。
今回は、筋トレの努力量を理解するために重要なRPE・RIR・速度ロスについて、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
筋トレの努力量とは何か?
筋トレにおける努力量とは、簡単に言うと「どれだけ限界に近いところまでセットを行ったか」ということです。
例えば、ベンチプレスを10回行ったとしても、その10回が限界ギリギリだったのか、まだ5回以上できそうだったのかによって、身体への刺激は大きく変わります。
同じ重量、同じ回数、同じセット数でも、努力量が違えばトレーニング効果も変わります。
そのため、筋トレでは「何kgを何回やったか」だけでなく、「どれくらい余力を残して終えたのか」も重要になります。
RPEとは?主観的なきつさを数値化したもの
RPEとは「Rating of Perceived Exertion」の略で、日本語では「主観的運動強度」や「主観的努力量」と表現されます。
簡単に言うと、自分自身がその運動をどれくらいきついと感じたかを数値化する方法です。
RPEは、もともと1970年代にグンナー・ボルグという研究者によって提唱された指標で、「ボルグスケール」とも呼ばれます。
もともとのRPEは6〜20のスケール
最初に作られたRPEスケールは、6〜20の段階で運動のきつさを評価するものでした。
なぜ6〜20という中途半端な数字なのかというと、心拍数と対応しやすいように作られていたからです。
例えば、RPE8程度なら心拍数80前後、RPE16程度なら心拍数160前後、RPE20なら心拍数200前後というように、心拍数と主観的なきつさが対応しやすいように設計されていました。
つまり、もともとのRPEはサイクルエルゴメーターやランニングなど、有酸素運動のきつさを評価するために使われていた指標です。
その後、0〜10のRPEスケールが使われるようになった
その後、RPEはより直感的に分かりやすいように、0〜10のスケールでも使われるようになりました。
0はまったくきつくない状態、10は限界に近い非常にきつい状態を表します。
この0〜10のスケールは直感的に理解しやすいため、現在でも運動のきつさを評価する場面でよく使われています。
なぜ通常のRPEは筋トレでは使いにくいのか?
RPEは運動のきつさを表す指標として便利ですが、筋トレにそのまま当てはめると少し問題があります。
なぜなら、筋トレは有酸素運動のように心拍数や息苦しさだけで努力量を判断しにくいからです。
例えば、ダンベルカールを限界まで行って、もう1回も上がらない状態まで追い込んだとします。
筋肉としては限界まで努力しているはずですが、ランニングで全力疾走した時のように心拍数が極端に上がるわけではありません。
そのため、「今のきつさを0〜10で評価してください」と言われても、限界まで追い込んだのにRPE10とは感じないことがあります。
スクワットやベンチプレスのような全身を使う種目ではきつさを感じやすいですが、アームカールやサイドレイズのような小さい筋肉を使う種目では、筋肉は限界でも全身のきつさはそこまで高く感じないことがあります。
つまり、通常のRPEだけでは、筋トレにおける「本当に限界に近かったかどうか」を正確に表しにくいのです。
RIRとは?あと何回できるかを表す指標
そこで筋トレの努力量を表す指標として使われるようになったのが、RIRです。
RIRとは「Repetitions in Reserve」の略で、日本語では「残り反復回数」や「あと何回できる余力があるか」という意味になります。
例えば、ベンチプレスを10回行った時点で「あと2回はできそう」と感じたなら、RIRは2です。
逆に、もう1回も上がらない状態なら、RIRは0です。
筋トレでは、このRIRの考え方が非常に使いやすいです。
なぜなら、筋トレの努力量は「息がどれくらい上がったか」よりも、「あと何回できたか」の方が現実的に判断しやすいからです。
筋トレで使われるRPEはRIRベースで考える
筋トレの世界では、RPEをRIRと関連付けて使うことが多くあります。
この場合、簡単に言うと以下のように考えます。
- RPE10:RIR0、つまりもう1回もできない限界の状態
- RPE9:RIR1、つまりあと1回できる余力を残した状態
- RPE8:RIR2、つまりあと2回できる余力を残した状態
- RPE7:RIR3、つまりあと3回できる余力を残した状態
かなり簡単に言えば、筋トレにおけるRPEは「10 − RIR」で考えることができます。
例えば、RIR2ならRPE8。RIR1ならRPE9。限界まで行ってRIR0ならRPE10です。
ただし、RPE1〜4のようにかなり軽い領域では、この対応関係はあまり正確ではありません。
筋トレで実用的に使いやすいのは、RPE6〜10前後、つまりある程度限界に近いセットです。
RIRは限界に近いほど精度が高くなる
RIRには重要な特徴があります。
それは、限界に近いほど予測の精度が高くなるということです。
例えば、「あと1回できる」「あと2回できる」という感覚は、多くの人が比較的判断しやすいです。
一方で、「あと10回できる」「あと15回できる」という感覚はかなり判断が難しくなります。
ベンチプレスやスクワットで、もう限界に近い時は「次は上がるか微妙」「あと1回ならいけるかも」と判断しやすいです。
しかし、セットの序盤でまだ余裕がある時に、「あと何回できるか」を正確に当てるのはかなり難しいです。
そのため、RIRはRIR0〜3程度の限界に近い範囲で特に使いやすい指標だと考えられます。
RIRの弱点は主観的であること
RIRは筋トレの努力量を考えるうえで非常に便利ですが、弱点もあります。
それは、あくまで本人の主観に頼る指標だということです。
例えば「RIR2で止めてください」と言われても、その人が本当にあと2回できる状態で止められているかは分かりません。
実際にはあと5回できたかもしれませんし、逆にあと1回しかできなかったかもしれません。
特に筋トレ初心者の場合、自分の限界を正確に把握するのは難しいです。
また、RIR5のように余力が大きい状態になるほど、予測はさらに難しくなります。
「あと1回できるかどうか」は分かりやすくても、「あと5回できるか」「あと8回できるか」を正確に判断するのは簡単ではありません。
そのため、研究や細かいトレーニング管理では、もっと客観的な指標が必要になることがあります。
速度ロスとは?挙上速度の低下を使った客観的な指標
そこで出てくるのが、速度ロスという考え方です。
速度ロスとは、セット中にバーベルやダンベルを持ち上げる速度がどれくらい低下したかを表す指標です。
筋トレでは、限界に近づくほど挙上速度が遅くなります。
例えば、ベンチプレスの1レップ目はスムーズに上がっても、セット後半になるとバーの動きが明らかに遅くなると思います。
これは疲労が溜まり、筋肉が発揮できる力が落ちてきているからです。
つまり、挙上速度の低下を見れば、そのセットでどれくらい疲労しているか、どれくらい限界に近づいているかを客観的に判断できる可能性があります。
速度ロスはRIRの客観的な目安になる
速度ロスは、RIRのように本人の感覚だけに頼るものではありません。
実際にバーの速度を測定することで、セット中にどれだけ挙上速度が落ちたのかを確認できます。
例えば、セットの最初のレップと比べて挙上速度が大きく低下していれば、それだけ疲労が溜まり、限界に近づいている可能性が高いです。
反対に、速度ロスがほとんど起こっていない場合は、まだかなり余力が残っている可能性があります。
このように、速度ロスはRIRを客観的に見るための指標として使われることがあります。
速度ロスの例
速度ロスは、例えば「最初のレップと比べて何%スピードが落ちたか」で判断します。
仮に、80%1RMの重量でベンチプレスを行ったとします。
この時、速度ロスが10%程度であれば、まだかなり余力が残っている可能性があります。
一方で、速度ロスが40%程度まで大きくなると、限界にかなり近づいている可能性があります。
さらに速度ロスが60%以上になると、ほぼ限界に近い状態まで追い込んでいると考えられます。
ただし、速度ロスは種目、重量、トレーニング経験、使用する機材によっても変わります。
そのため、一般のトレーニング現場では細かい数値まで完璧に管理するというより、「セット後半で明らかに速度が落ちてきたか」を見るだけでも十分参考になります。
RPE・RIR・速度ロスの違い
ここまでを整理すると、RPE・RIR・速度ロスはそれぞれ次のような違いがあります。
RPE
RPEは、運動のきつさを主観的に数値化する指標です。
もともとは有酸素運動の強度を表すために使われていたため、筋トレにそのまま使うと少しズレが出ることがあります。
RIR
RIRは、あと何回できる余力があるかを表す指標です。
筋トレの努力量を考えるうえでは非常に使いやすく、特に限界に近いセットでは実用性が高いです。
速度ロス
速度ロスは、挙上速度の低下を使って疲労や限界への近さを判断する指標です。
RIRよりも客観的に判断しやすいというメリットがありますが、正確に測るには専用の測定機器が必要になることもあります。
結局、筋トレではどれを使えばいいのか?
一般的な筋トレでは、まずRIRを使うのがおすすめです。
理由は、特別な機材が必要なく、日々のトレーニングで使いやすいからです。
例えば、筋肥大を目的とする場合は、セットの多くをRIR0〜3程度で行うと、十分な刺激を入れやすくなります。
毎セット必ず限界まで追い込む必要はありませんが、余力を残しすぎると刺激が足りなくなる可能性があります。
そのため、トレーニング中は「あと何回できたか」を意識しながら行うことが大切です。
さらに細かく管理したい場合や、競技レベルでトレーニングを行う場合は、速度ロスを活用するのも有効です。
ただし、一般の方が毎回速度を測定するのは現実的ではないため、まずはRIRを基準にするだけでも十分です。
初心者はRIRを低く見積もりやすい
初心者の方に多いのが、「限界までやったつもりでも、実際にはまだかなり余力が残っている」というケースです。
例えば、自分ではRIR1〜2だと思っていても、実際にはあと5回以上できることもあります。
これは、まだ筋トレの限界感に慣れていないためです。
特に筋肥大を狙う場合、毎回限界まで追い込む必要はありませんが、あまりにも余力を残しすぎると筋肉への刺激が不足しやすくなります。
初心者の方は、フォームが崩れない範囲で「本当にあと何回できるのか」を少しずつ確認していくことが大切です。
追い込みすぎにも注意が必要
一方で、毎セット限界まで追い込めば良いというわけでもありません。
毎回RIR0まで行うと、疲労が大きくなりすぎて、次のセットや次回のトレーニングの質が落ちることがあります。
特にスクワットやデッドリフトのように全身への負担が大きい種目では、限界まで追い込みすぎると回復が追いつかなくなることがあります。
筋肥大や筋力アップでは、1回のセットで限界まで出し切ることだけでなく、長期的に質の高いトレーニングを積み重ねることが重要です。
そのため、基本はRIR1〜3程度を目安にしながら、必要に応じて最後のセットだけ限界に近づけるような使い方がおすすめです。
まとめ
筋トレの努力量を考えるうえで、RPE・RIR・速度ロスは非常に重要な指標です。
RPEは、運動のきつさを主観的に数値化したものです。もともとは有酸素運動の強度を評価するために使われていたため、筋トレにそのまま使うとズレが出ることがあります。
RIRは、あと何回できるかを表す指標です。筋トレでは非常に使いやすく、特に限界に近いセットでは実用性が高いです。
速度ロスは、挙上速度の低下を見ることで、疲労や限界への近さを客観的に判断する指標です。より正確に管理したい場合に役立ちます。
一般的なトレーニングでは、まずRIRを基準にするのがおすすめです。
「あと何回できるか」を意識するだけで、筋トレの質は大きく変わります。
なんとなく回数をこなすのではなく、どれくらい余力を残して終えたのかを把握することで、自分に合った強度でトレーニングを進めやすくなります。
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